家族信託は危険!?先にリスクを知ってトラブルを回避しましょう

近年、家族信託がメディアでも多く取り上げられるようになりました。

実際、家族信託について相談にみえる方が増えています。

家族信託とは「委託者(主に親)が元気なうちに、信頼できる受託者(主に家族)に財産を預ける」制度のこと。

気になるのは、家族信託の相談を受ける中で「家族信託さえしておけば安心」と思われている方が非常に多くなっていることです。

実は、家族信託は万能の制度ではありません。

今回は家族信託を検討する時に、知っておいて頂きたいリスクとトラブルを回避するための方法を解説していきます。

家族信託に潜む7つのリスク

①万能ではない

家族信託はあくまで「家族が家族のために行う財産管理の制度」です。

託した財産以外は管理できませんし、現状では農地の信託はできません。

専門家に相談せず、インターネットで信託銀行などの信託契約書ひな型をみて

自己流に家族信託を組み立ててしまうようなケースも見受けられます。

実務に詳しい専門家に一度はご相談の上、家族信託契約を組成してください。

②受託者をやりたがらない、もしくは委託者の同意がとれない

家族信託の受託者となる場合、様々な手続きが必要となります。

説明のために、不動産の管理を目的とした家族信託のケースを考えます。

受託者には不動産を管理する義務が発生し、毎年の固定資産税の納税通知書も受託者に届きます。

また、受託者は、毎年受益者に対して「信託財産にかかる帳簿」と「財産状況開示資料」を作成し報告・保管しなければなりません。

そのため、責任が重くなるという理由で受託者を誰もやりたがらないといったケースがあります。

また、委託者側が財産を家族に取られるのではないか等と考えてしまい、家族信託の制度利用に反対するといったケースもあります。

③親族間で不公平感を生むおそれがある

兄弟が何人かいるご家庭において、そのうちの1人が受託者となった場合、兄弟間で争いがうまれる可能性があります。

本来、家族信託において受託者は委託された資産を適切に管理・処分・運用する義務があります。

しかし受託者は、委託者の資産に対して大きな権限を持つため収支が不透明化してしまう場合があるのです。

よって、当事務所では、なるべく関係者を2人きりにせず、その他の家族にも家族信託契約に関わっていただくようにしています。

また、契約の内容によっては、兄弟の相続遺留分を侵害する形になる可能性もあります。

最初から高齢者の財産を自分に取り込む算段で家族信託を設定させようとするトラブルもあるので注意が必要です。

④長期間制度に拘束される

家族信託には1次相続だけでなく、2次以降の財産承継者まで決定できるという機能があります。

これによって、相続関係が複雑な家庭の資産・事業承継についてはこの機能が非常に有効なものになります。

ただし、何世代にもまたがって資産の処分や運用に制限をかける事に繋がる可能性もあるため、かえって不測の事態を招くようなリスクもあります。

⑤損益通算できない

信託から生じた不動産の損失を、信託財産意外から生じた所得と損益通算することはできません。

もちろん、損失の繰越し控除もできないので注意が必要です。

また複数の信託契約間の損益も通算できないので、2つ以上の不動産を信託したい場合は、必ず税理士に確認の上、計画をたてましょう。

⑥扱えない財産もある

畑や田んぼについては家族信託をできません。

畑、田んぼは農作物を育てる「農地」にあたるため、農業協同組合または農地保有合理化法人による信託引き受け以外は原則信託ができない不動産です。

⑦節税効果はない

よく「相続税対策として家族信託を検討したい」と相談に来られる方もいらっしゃいますが、家族信託自体に相続税を節税するような効果はありません。

あくまでも「受託者に代わって委託者が財産を処分・管理・運用する」制度です。

そのため、節税効果を求める場合は専門家に相談して節税につながる制度をつかうことになります。

家族信託に潜むリスクを回避するには

家族信託と他の制度を一緒に準備する

特に、認知症対策として家族信託を選ぶ時は、家族信託だけでは不十分なケースがあります。

施設に入所する手続きを代理する身上監護権がないためです。

そのため、家族信託を検討するときは任意後見契約と遺言を一緒に準備すれば、それぞれ効果が及ばない所をカバーできて安心です。

関係者全員で話し合い家族信託の内容を理解する

推定相続人まで含めて、関係者全員で話し合って内容について同意をとっておくことを強くおすすめします。

トラブルに発展する一番の原因は「自分は知らなかった・知らされなかった」という感情です。

関係者全員が家族信託の内容を理解して納得できれば、争いは避けられます。

そして、それこそが委託者である親の一番の願いなのです。

専門家に相談する

家族信託は比較的新しい仕組みです。

そのため、専門家が少ないのが現状です。

上記であげたリスクを回避するためには、多方面にわたる法律および税の知識が必要です。

家族信託を本当に有効な制度とするためには、こうした専門家に相談するのがおすすめです。

家族信託はリスクを知った上で進めましょう

家族信託は、受託者(親)の体調や判断能力に左右されずに、財産の管理処分ができる制度です。

しかし、万能ではないので注意が必要です。

また身上監護権はないので、親に代わって施設へ「支払い」は出来ても、その他の契約ができない可能性があります。

また、兄弟が何人かいる場合、1人が受託者となって親の財産を管理する事で不公平感が生まれ、将来的な争いのきっかけになることもあります。

必ず、関係者全員で話し合って家族信託の内容について話し合い同意を得ておきましょう。

他にも、家族信託には扱えない財産がある点、損益通算できない点、また直接的な節税効果がない点にもご注意下さい。

家族信託は、その制度の内容を理解して設定できれば、非常に画期的な制度と言えます。

しかし、万能ではないのできちんとリスクを知り、リスク対策まで同時に検討しなければなりません。

自分たちで手続きを進めて後々トラブルになる事態を避けるために、事前に法律や税の知識に詳しい専門家に相談した方が良いでしょう。

当事務所は家族信託・任意後見を多く取り扱っております。

お気軽にご相談下さい。