信託口口座とは?
「信託口口座って何ですか?」
「親の使ってない口座を信託口口座にできますか?」
家族信託が広まる中で、こうした相談にいらっしゃる方が多くなっています。
今回は、信託口口座について、口座開設の流れと注意点をお話したいと思います。
信託口口座とは?
信託口口座とは、家族信託などで信託した預貯金を管理する口座のことです。
通常の銀行口座は、口座名義人の名前が通帳に記されています。
信託口口座の場合、通帳には信託の受託者と委託者2人の名前が記されたものになっています。
信託口口座を開設するまでの5つの流れ
信託口口座を開設しようと思って突然銀行を訪れても、口座は開設できません。
では、どうすれば開設できるのでしょうか?
順を追って見ていきたいと思います。
①家族信託の契約を設定する
まず、専門家に相談をして家族信託の内容を相談しましょう。
信託契約には「受託者」「委託者」「受益者」を決めてきます。
例えば「父親(委託者)のお金を子(受託者)が預かって運用し、母(受益者)の介護に使う」といったケースです。
この時、将来的なトラブルを避けるためにも親戚を含めた関係者全員で話し合うことが推奨されています。
専門家を伴って、だれがどのくらいの資産をどのような方法でどのような目的で運用するのか、きちんと話し合い全員が納得することが大切です。
②家族信託の書類を作成する
家族信託の書類は、私文書でも構いません。
しかし、法律上有効な書類かというとこれは違う問題があります。
自身で書類を作成しても、不備や漏れがあった場合は法的に有効と認められず争いをうむ恐れがあります。
必ず家族信託の書類は、専門家に依頼し作成してもらいましょう。
また、契約書の他に印鑑は戸籍謄本、権利書などが必要になる場合がありますので、事前によく確認しておきましょう。
③金融機関で審査をうける
家族信託の書類を作成したら、その書類を金融機関に提出し審査をうけることになります。
家族信託には複数の人間が関係します。
そのため不正がないか金融機関がチェックしなければなりません。
「どのような目的での口座開設なのか」「委託者と受託者はどのような関係か」「トラブルを抱えていないか」といった項目が審査されます。
④公正証書を作成する
金融機関の審査に合格して、はじめて正式な契約手続きが可能となります。
委託者と受託者がそろって公証役場へ行き、公証人を立てた上で契約内容を改めて確認します。
⑤金融機関で信託口口座を開設する
公正証書を作成して、ようやく金融機関で信託口口座を開設することができます。
金融機関で信託口口座を開設する場合、公正証書でなければ受理してもらえないことがほとんどです。
この時、本人確認書類と契約書、届出印が必要になります。
また、信託口口座を開設する金融機関の、口座開設条件も事前に確認しておきましょう。
信託口口座の注意点
託者はあくまで信託された財産の管理権限があるだけ
法律によって、受託者は受益者のために信託財産を分けて管理することが定められています。
信託財産は受託者個のものになるわけではなく、自身のために出金や振り込みなどは出来ないので注意しましょう。
受託者は委託者の代理人にはなれない
受託者は委託者の財産を管理運用する権限がありますが、委託者のかわりに何かの手続きをする権限はありません。
例えば、委託者が施設に入居する時、受託者は施設の利用料を払う事が出来ますが、入居の手続きを代理で行うことはできません。
こうした懸念がある場合、必ず家族信託と一緒に成年後見制度を組み込むようにしましょう。
信託口口座を開設するまでに時間がかかる
信託口口座を開設するためには、家族や親戚をはじめ弁護士や金融機関といった多方面での話し合いが必要です。
また、何を信託するかによって手続きが複雑化するため時間がかかります。
目安としては、短くても2か月程度、長いと半年ほどかかると言われています。余裕をもって口座を開設することをおすすめします。
親の年金受給口座を信託口口座にすることはできない
「親の使っていない個人口座を信託口口座にできる?」「年金受給の口座を信託口口座にしたい」
たまに、こうしたご相談に来られる方がいらっしゃいます。
しかし、説明した通り信託口口座には多くの書類と審査、手続きが必要になります。
個人口座を利用することはできませんので注意してください。
また、年金の受給は一身専属権になるので、権利自体を信託財産に移すことはできません。
年金を受給する口座は、年金受給者自身の個人口座である必要があります。
解決策として「家族信託と合わせて任意後見の手続きを取る」もしくは「個人の年金受給口座から自動送金で一定額を信託口口座に入れる手続きを取る」といった方法が考えられます。
信託口口座とは?口座開設までの流れと注意点
信託口口座とは、家族信託などで信託した財産を管理・運用するための口座のことです。
開設にあたっては、金融機関での審査や専門家による契約書の作成などが必要であり、時間がかかります。
また、受託者は信託された財産を管理・運用する権限があるだけで、財産を自分のために出金したり振り込んだりすることはできないので注意が必要です。
信託口口座の開設には複雑な手続きを伴います。
「何かあった時に備えて家族信託を設定しよう」と思っても、契約の途中で何かがあっては遅いのです。
遅くなる前に、専門家に一度相談することをおすすめします。
当事務所は家族信託のスペシャリストです。
オンライン面談も可能ですので、是非早めにご相談ください。